今回は、弊社の新たな取り組みについてご報告します。 近畿大学経営学部の西尾久美子教授と共同研究プロジェクトをスタートしました。
AIの時代に問われているのは「何をしたいか」
先日、西尾先生との第1回対談を実施しました。テーマは「創造的熟達と適応的熟達」。対談の詳細は、後日動画やnote記事として改めてお届けする予定です。今回は、対談を経て私自身が考えたことをお伝えします。
経営学には「適応的熟達」と「創造的熟達」という概念があります。「適応的熟達」とは、既存の技術や仕組みを正確に使いこなせるようになること。前号でお伝えした「使い手」のイメージに近い成長です。一方、「創造的熟達」とは、培ったスキルをもとに、今までにない価値を生み出すこと。プロセスそのものをデザインし直す「作り手」の領域です。
日々、企業のAI導入を支援する中で強く感じていることがあります。AIは「技術の民主化」を起こしている。専門知識がなくても、自分のアイデアを形にできる時代が来ました。すると、問われるのは「どう使うか」ではなく、「何をしたいか」になります。
AIが大体のことをできてしまう時代に、「何をしたいのか」がないままでは、適応的熟達ばかりの使い方になってしまう。
ツールの使い方は上達しても、それだけでは創造的な仕事にはつながらない。自分は何を実現したいのか、この技術で誰のどんな課題を解決するのか。その問いを持てるかどうかが、AI時代のキャリアを分けていくと考えています。
技術だけでは届かない領域
もう一つ、私が常々考えていることがあります。それは「教養」の重要性です。
AIが何でもできるようになるほど、最後に残るのは人間の判断です。この方向に進んでいいのか。この技術をこう使うことは正しいのか。その判断の拠り所になるのが「教養」ではないかと考えています。
ここでいう教養とは、知識の量ではありません。他者の立場に立てるか、自分の判断に胸を張れるか。それは技術では補えない、人間にしか持てない力です。
私たちはAIを活用して組織の変革を支援する会社です。しかし、技術だけでは、本当に組織が変わることはない。「何をしたいか」を問い、判断の質を高めていくためには、人と組織の専門家の視点が不可欠でした。
西尾久美子先生は、近畿大学経営学部キャリア・マネジメント学科の教授で、専門は事業システムと人材育成です。京都花街の芸舞妓や能楽の世界をフィールドに、「人がどう育ち、どう熟達していくのか」を長年研究されてきました。著書『京都花街の経営学』は多くの読者に支持されています。
創造と適応は対立ではなく、掛け合わせるもの。技術の力と人間の判断力、その両方があってこそ、働くことはもっと面白くなる。
この共同研究が目指すもの
私たちはAIを活用して組織の変革を支援する会社です。一方、西尾先生はキャリア形成や人材育成の専門家として、「人がどう働き、どう成長するのか」を長年研究・実践されてきました。
AIが「できること」を広げていく時代に、人はどうキャリアを築いていくのか。組織はどう人を活かすのか。AIの視点とキャリアの視点、その両方を掛け合わせることで見えてくるものがあるはずです。
AI × キャリア。技術の進化と人の成長、その交差点を探ります。
この対談シリーズは今後も継続していきます。対談の内容は動画やnote記事として公開し、得られた知見はこのメルマガでもお届けしていきます。
西尾先生のnoteが始まりました
西尾先生ご自身も、noteでの発信をスタートされています。
最新記事「プロローグ」では、介護やキャリアの中断を経て経営学者になるまでの道のりが綴られています。「自分の人生には何もない」と感じている方にこそ読んでいただきたい一篇です。
新著の出版に向けた執筆過程も公開されていく予定です。ぜひフォローしてみてください。