先日、私自身が学んだ大阪大学 工学研究科のある研究室で、AIエージェント講座を実施してきました。教育・研究の現場でAIエージェントをどう活用していくべきか、その基礎を学んでいただき、「この研究室ならどんな使い方ができるか」を皆さんに議論してもらう、という時間です。今号は、その講座のあとに起きた、ある「白熱した談笑」から始めさせてください。
講座のあと、審美眼の話で盛り上がった
講座が終わり、お茶を飲みながらの談笑のなかで、ふとした問いから議論が一気に白熱しました。「AIの出力は、デザインとして意味を持ったものを作れるのか」。そして、もしAIに出力させることばかりになっていったら、その出力の良し悪しを判断する『審美眼』は、どうやって磨けばいいのか。研究の最前線にいる方々だからこそ出てくる、本質的な問いでした。
この問いは、研究室に限った話ではありません。資料作成でも、企画でも、AIに任せる場面が増えるほど、誰もがいずれ向き合うテーマです。今号は、この「AIの出力と、人間の眼」について、私がいま考えていることを共有させてください。
AIの出力は、放っておくと「フラット」になる
AIはスライドや資料を、驚くほどの速さで作ってくれます。ただ、特に指示を出さないと、その出力はとても「フラット」なものになりがちだ、というのが私の実感です。すべての情報が、同じ重さ・同じ温度で、ただ平らに並んでいる状態です。
資料も研究発表も、本来は「伝える」ための営みです。伝えるとは、どこを強く押し出したいのか、話の流れのなかで内容どうしがどう関連しているのか――そうした「強弱」を相手に届けることに他なりません。情報がフラットに並んでいるだけでは、受け手はどこに目を向ければいいのか分からないのです。
伝えることの本質は、情報に「強弱」をつけること。
そして、この強弱を設計できるのは、いまのところ人間の側です。何を一番に伝えたいのかを決め、話の流れを組み立て、関連性に濃淡をつける。ここは、AIに丸投げするのではなく、人間が手綱を握るべき領域だと考えています。
「1つだけ出させて選ぶ」のではなく「たくさん出させて選ぶ」
では、人間はどう関われば、AIの出力をより良いものにできるのか。私がいまの生成AI・AIエージェントで最適解だと考えているのは、「1つの答えを求めるときに、AIに1つだけ出させない」という関わり方です。
いろいろな視点から精査させ、複数の出力を並べて出させる。そのうえで、人間が適切なものを選ぶ、あるいは複数の良いところを組み合わせる。1つの出力をそのまま受け取って判断するよりも、ずっと質の高い結果にたどり着けます。
- AIには「複数の視点で、複数案を出す」役割を担ってもらう
- 人間は「どれが良いか」を見極め、選び、組み合わせる役割を担う
- この「選ぶ・組み合わせる」を支えるのが、まさに審美眼
実は、このメールマガジンのサムネイル画像も、まさにこの方法で作成しています。1枚だけ生成させるのではなく、複数の視点・複数の案を出させたうえで、最終的に人間の眼で選び抜いています。(作成方法にご興味のある方は、ぜひご連絡ください。喜んで共有いたします。)
効率化の先で、人間の感性をどう守り、育てるか
ここまでお話ししてきて、最後にどうしても触れておきたいことがあります。それは、AIで効率化を進めることと、人間の感性を尊重し、育てていくことは、両立させなければならないということです。
強弱を設計するのも、複数の案から最良を選び取るのも、最後は人間の審美眼です。けれど、その審美眼は、自分で考え、迷い、手を動かすなかでしか磨かれません。AIに出力させて選ぶだけの日々が続けば、選ぶための眼そのものが、いつの間にか鈍ってしまう危うさもあります。研究室での談笑が白熱したのも、皆がそこに直感的な危機感を抱いていたからでしょう。
AIで効率化を図りつつ、人間の感性を育てることも、忘れない。
だからこそ私は、AIを「人間の眼を奪うもの」ではなく、「人間の眼を、より多くの選択肢で鍛えてくれるもの」として使いたいと考えています。たくさん出させて、たくさん見て、たくさん選ぶ。その積み重ねが、効率化と審美眼の育成を、同じ方向に向かわせてくれるはずです。
貴社での資料作成や、AIエージェントの活用設計についてご相談があれば、ぜひご連絡ください。「AIに何を任せ、人間が何を握るか」という線引きを、一緒に考えさせていただきます。